この6月21日、不動産経済研究所が主催し、「更新料裁判」の行方と波紋について、講師をしました。
東京霞ヶ関のビルで、また大手不動産会社担当者を聴衆としていたので緊張しましたが、先に弁護士のかたの詳しい解説がありましたので、それをトレースしながら、話題を広げていきました。
私は、賃貸借や売買は市民社会で最もよく繰り返される契約ですから、この契約に国家権力(つまり、裁判所)が介入するのは避けられるべきと考え、成立した契約をひっくり返すのは裁判所も慎重だろうと予測していました。しかし、敷引き特約や更新料を無効とする判決が相次ぎ、市場ではまず、敷引き特約がすっかり姿を消しましたし、更新料もなくなりつつあります。
さる1月31日、昨年10月の京都地裁の判決を解説しながら、更新料有効の最高裁判決が期待できる状況だと予測しました。この講演が好評で、今回の東京でのセミナーとなった次第です。
さて、京都地裁は、大家の解約権が制限されているとはいえ、借家人の解約がいつでも自由にできるわけではないと鋭い問題点を提起。たとえば、2年契約を結べば、大家はその2年間の家賃収入をあてにするから、途中契約はその期待を覆すわけで、違約金や解約金の処理があってもおかしくない。そして、その金額は1ヶ月分としても許されると判示した。更新料はその違約金を含むと解釈できる、この指摘は斬新で、実務と法律との接点を解明した名判決でした。
この裁判官は、すでに最高裁が更新料訴訟のため、法廷を開くことをきめていることをわかって、その判決の方向性に影響を及ぼすような、「野心的」な見解だともいえるでしょう。
そして、この3月、最高裁が敷引き特約を有効とする判決を出して、状況は一変しました。すでに、最高裁は敷引き特約は無効との判断を行なっていましたから、関係者に衝撃を与えてたのでした。この判決はしかし、無効との判例を着実に踏襲しています。
①明確な合意があれば、契約は成立すること。とくに不合理でなければ、消費者契約法を適用できないとし、2年で家賃の2か月分ほどを差し引くのは許されると。
②もっと大きなことは、家賃に含まれているべき「通常損耗の費用」すら、特約により、賃借人に転嫁してよいこと。これは予想を超える判断であり、今後、訴訟の流れをすっかり、変えるでしょう。
最高裁は、契約社会を尊重する、リべラルな立場を堅持したたいへん、珍しい出来事と言えますね。
これは、私がこれまで、主張してきたところの、民間で一旦成立した契約をひっくり返すのはよほどの不合理がなければということが確認されたのです。
最高裁は7月、更新料について、無効かどうかではなく、有効との観点から、その定義、許容される額の、ふたつの判断を行なうことでしょう。